「書きて」が「書いて」になる。音が詰まる。喉の奥で一瞬、息が止まる。その一瞬の沈黙が、言葉の意味を変える。「来た」と「着た」は同じ音のようでいて、促音の深さが違う。舌の位置が違う。そういうことを考え始めると、きりがなかった。
「書きて」が「書って」にはならない。「い」になる。そこには恣意的でない法則がある。けれどなぜ「い」なのかと聞かれると、答えに窮する。そうなったからそうなのだ、としか言えない。長い時間をかけて、無数の口がそう発音してきた結果だ。規則はあとから見出されたものにすぎない。
曲がるべきところで曲がり、止まるべきところで止まる。関節のようなものだ。声に出すたび、喉のどこかで一瞬だけ息が途切れる。その沈黙を、聞いている側は聞き落とす。でも話している側は知っている。止まっている。ほんの一拍、そこで言葉が黙っている。
言い切れなかったものは、いつもその一拍の中にある。