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日常

  • 余白

    お仕事 / 日常 / 現代

    十月の第三週になると、キャンパスの空気が変わる。講義棟の廊下に養生テープの跡が増え、段ボールを抱えた集団が早足で行き交い、どこかの教室から必ずペンキの匂いがする。学園祭まであと十日。わたしの職場であるメディアセンターのP […]

    3,833字 / 約6分

  • 巣鴨の路地

    家族 / 日常 / 現代

    実家に戻ってきて、三ヶ月になる。 巣鴨の駅から徒歩で十分、路地の奥に祖父の代からの家がある。父が継いだ家業は、古い土地を貸して回していくだけの仕事で、毎日決まって出ていく場所もない。透は朝起きて、庭に出て、植木に水をやる […]

    1,029字 / 約2分

  • カモメ

    日常 / 現代

    四月の内科クリニックは、くしゃみの音で時計がいらない。三分に一度、誰かがティッシュを引き抜く音がして、その合間をぬうように受付の女性が番号を読み上げる。七番、八番。番号札の紙は薄い黄色で、端が少し丸まっている。発券機では […]

    8,478字 / 約14分

  • サイト限定

    完結

    よその家

    日常 / 現代 / 社会人

    母と絶縁して五年。ふと検索した母のSNSに映っていた庭は、花が満開だった。隣に越してきた人は、夜ごと鳴る電話に一度も出なかった。離れたはずの家の気配が、画面越しに、壁越しに届いてくる。

    全2話 8,905字 / 約15分

  • 壁ひとつ

    日常 / 現代

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    6,594字 / 約11分

  • お手続き

    お仕事 / 日常 / 現代

    十一月の土曜日、午後一時。 駅前の携帯ショップに入ると、自動ドアの向こうは思いのほか静かだった。白い床、白いカウンター、白い椅子。清潔というより、感情を持ち込まないでくださいという意思表示みたいな内装だ。観葉植物だけが、 […]

    3,932字 / 約7分

  • お気の毒に

    ヒューマンドラマ / 家族 / 日常 / 現代

    トイレに立つたびに目に入るので、家族のなかでいちばん頻繁に顔を合わせているのは祖母ということになる。 正確には遺骨の一部で、直径三センチほどのガラス玉に封じ込められている。トイレ前の壁に設えたニッチに、読みかけの文庫本と […]

    5,146字 / 約9分

  • 輪郭をなぞる

    お仕事 / 日常

    職能として言葉を扱うようになって、余計にわからなくなった。身を投じるほど底が見えなくなる。 同じ言葉を何十回と口に出しているうちに、意味が剥がれて音だけになる。机、と十回言ってみる。つくえ、つくえ、つくえ。やがてそれは意 […]

    305字 / 約1分

  • 0.5秒

    日常 / 現代

    閉まった。 目の前でエレベーターのドアが閉まった。ボタンの前に立っていた男の人と、一瞬だけ目が合った気がする。気がする、というのは、ドアが閉まりきるまでの隙間から見えた横顔が、こちらを認識していたのかしていなかったのか、 […]

    2,982字 / 約5分

  • 穴埋め

    お仕事 / 日常 / 現代

    「え! 先生、AI使ってるんですか?!」 思わず声が裏返った。 能勢先生の仕事場はマンションの一室で、防音はそこそこしっかりしている。隣に聞こえる心配はまずないけれど、自分の声の上ずり方に自分でひるんだ。 「使ってるよ? […]

    2,438字 / 約4分

  • 行きつけ

    日常 / 現代 / 社会人

    行きつけのカフェが最近やけに混んでいる。 べつに新メニューが出たわけでも、雑誌に載ったわけでもない。あの店はもう十年以上ああやって静かに営業していて、常連の顔ぶれは年単位でしか変わらない、おだやかな場所だった。それがここ […]

    1,768字 / 約3分

  • 体質

    お仕事 / 日常 / 現代 / 社会人

    人の好みを覚えるのは昔からだった。 友達の鞄のキーホルダーが変わったら気づく。先生がいつもと違う靴を履いていたら目がいく。クラスメイトが昨日と同じ服を着ていても気づくけれど、それは言わない。気づいていることを全部口にした […]

    2,048字 / 約3分