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日常
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角を曲がったところで
ヒューマンドラマ / 家族 / 日常 / 現代
1 2 3 4 1 ハンドルを握る手が湿っている。 「この先の角を曲がったところで待ってて」 妻が降りたのは三十秒前だ。いつもの言い方、いつもの段取り。妻が買い物をしている二十分かそこらのあいだ、自分はこの車を預かる。エ […]
6,193字 / 約10分
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臨機応変
お仕事 / 日常 / 現代 / 社会人
四月からバイトを始めた。 初日、店の裏口で支配人と会った。日焼けした顔の小柄な男で、ポロシャツの襟がくたびれている。事務所に通されると、スチール棚と古い冷蔵庫のあいだの隙間みたいな空間に、段ボールが積まれていた。その上に […]
5,206字 / 約9分
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密閉
日常 / 現代
「もうさ、なんで密閉袋に入れないかな。湿気っちゃうでしょ」 流しで洗い物をしていた母が、蛇口を止めもせず首だけこちらに向ける。 「えー? 湿気る? ハサミで開けて、輪ゴムで止めて、冷蔵庫。それでいいと思ってた」 「だめだ […]
577字 / 約1分
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小野さん
お仕事 / 日常 / 現代 / 社会人
火曜日のこと 名前の在処 交代 田中さん 火曜日のこと 火曜日の十一時四十分になると、自動ドアが開く。 革靴の踵がリノリウムに触れる音で、顔を上げなくてもわかる。スリッパに履き替える動作が丁寧で、脱いだ靴をきちんと揃える […]
3,384字 / 約6分
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ハッピーポンコツ睦言
お仕事 / 日常 / 現代 / 社会人
紙 怪我 頭 金 息災 紙 「痛ッ」 封筒の角で人差し指を切った。血が出ている。浅いけど、しみる。冬場は乾燥してっからな、こういうのがいちいち深く入る。ティッシュ巻いとけば止まるだろ、と思って巻いた。巻き方が雑で、ティッ […]
3,308字 / 約6分
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一般人
すれ違い / 日常 / 現代 / 社会人
結婚しよう、と彼が言った。 居酒屋だった。金曜の、騒がしいほうの時間帯で、隣のテーブルでは大学生くらいの男の子たちがビールタワーを囲んでいた。彼の声はその喧噪にまぎれて半分くらい聞こえなかったけれど、口の動きと、それから […]
1,973字 / 約3分
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ご機嫌のゆくえ
日常 / 現代
美都が「もう無理かも」と言い出したのは、トマトクリームパスタをフォークでぐるぐる巻きにしながらだった。バイトを変えて、まだ三日。 「早くない?」 「早いよ。自分でもわかってる」 美都はフォークを皿に置いて、ため息をひとつ […]
1,825字 / 約3分
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秋の日は鶴瓶落とし
家族 / 日常 / 現代
秋の日は鶴瓶落とし、という。さっきまで明るかった空が、気づくと暗い。井戸の底に落ちる桶のように、一気に沈む。その速さにいつも驚く。何度秋を過ごしても慣れない。 法事の帰りだった。叔母の三回忌。座敷に通されて、仕出しの蓋を […]
1,638字 / 約3分
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うちのママの絵
家族 / 日常 / 現代
うちのママは絵が下手だ。下手、というのもちょっと違う。絵心がないとか、不器用とか、そういう話ではなくて、もっと手前のところで何かが絶望的に噛み合っていない。たとえば、立方体が描けない。 四角に何かをつけ足すと立方体になる […]
1,243字 / 約2分
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指定席
家族 / 日常 / 現代
毎週土曜の十四時から、息子はスイミングスクールに通っている。レッスンは一時間。 一時間をどう過ごすかは、待合室に足を踏み入れた瞬間に決まる。 ガラス越しにプールを見下ろせるその部屋には、すでに母親たちが集まっていて、パイ […]
1,226字 / 約2分
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風邪をひいた時に見る夢
日常 / 現代
風邪をひいた時に見る夢には特有の質感がある。輪郭がない。場面と場面の継ぎ目がない。さっきまで教室にいたのに次の瞬間には知らない川の前に立っていて、それを不自然だと思わない。思わないことが、起きてから怖くなる。 熱があると […]
1,000字 / 約2分
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飽和食塩水
シリアス / 日常 / 現代
ひとりでいるのはよくない。余計なことばかり考えてしまう。 友人から写真が送られてきた。何人かで集まった食事の席で、テーブルの上に皿が並んで、誰かの手がグラスを持ち上げている。添えられた文面は短かった。来ればよかったのに。 […]
984字 / 約2分