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ダーク
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残高
AI / ダーク / ディストピア / 現代
百十二円だった。 柘植拓真がその差額に気づいたのは、月末の家計簿アプリを開いたときだった。二十七日の夕方、タクシー配車アプリで自宅から駅前のクリニックまで乗った。降りるとき、画面には千四百八十円と表示されていた。翌日届い […]
3,860字 / 約6分
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なんか
シリアス / すれ違い / ダーク / 現代
奈津が足の小指をテーブルの脚にぶつけたとき、相馬は台所で麦茶をグラスに注いでいた。短い悲鳴のあと、うずくまる背中に「大丈夫?」と声をかけると、奈津は目に薄く涙を浮かべたまま笑って「大丈夫」と言った。 そのときの大丈夫は、 […]
3,807字 / 約6分
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検視
お仕事 / シリアス / ダーク / 現代
先生の手は、正確だった。 メスの角度も、開いた後の縫合も、すべてに理由がある。もう何も感じない体に同じ手間をかけるのは無駄ではないかと、一度だけ訊いたことがある。この人にはまだ名前がある。手を止めないまま先生はそう云った […]
1,873字 / 約3分
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全員まる
シリアス / ダーク / 現代
四月の教室は少しだけ埃っぽい。春休みのあいだ誰もいなかった部屋を、朝の光がやわらかく照らしている。新しい教科書の紙の匂いがする。名簿順に並んだ机が、まだ誰のものでもない顔をしている。担任の宮下先生は、若くて、声が大きくて […]
1,882字 / 約3分
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鏡のかけら
シリアス / ダーク
心臓に鏡のかけらが刺さったようだった。雪の女王様に魅入られた少年のように。 少年は気づかなかった、とアンデルセンは書いた。かけらが刺さったまま世界を見るから、美しいものが醜く見えた。花を踏んで笑った。雪の結晶の完璧な幾何 […]
791字 / 約1分
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正解の温度
シリアス / ダーク
選び取ったのはわたしで、選ばせてくれと頼んだのもわたしだった。彼が意識のあるあいだに口にしていたのは、逃げろ、ということだけで、それ以外の言葉を彼はわたしに残さなかった。彼はずっとそうやって生きてきた。逃げて、逃がして、 […]
922字 / 約2分