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現代

  • 別れる、と律は言う

    俳優 / 演劇 / 現代

    四月の終わり、律から会いたいと連絡が来た。指定された場所は、二人がよく使っていた喫茶店ではなく、巣鴨の駅前のチェーンの方だった。それで、おおよそ察しはついた、と透はあとで思ったが、その時はまだ察しきれていなかった。 向か […]

    1,290字 / 約2分

  • 手つき

    官能 / 家族 / 現代

    澪がドアを開ける気配がして、匠は手元の本を伏せた。 ノックはない。最初の頃はしていたけれど、いつの間にかしなくなった。そのほうがいい。ノックには返事がいる。返事には判断がいる。入っていいのか、今夜はどうか。そういうことを […]

    2,326字 / 約4分

  • 誕生日

    すれ違い / 俳優 / 演劇 / 現代

    律の誕生日に、透はディナーを予約した。律が好きだと言ったことのある、神楽坂の隅の店だ。前日のうちにケーキも頼んでおいた。律の苦手な、苺の上にやたらクリームが乗っているのではない、ふつうのチョコのやつ。 当日、家を出る前に […]

    988字 / 約2分

  • sudo_hiroshi

    家族 / 現代

    スーツケースにユニフォームを入れた。レプリカじゃない、ちゃんとした刺繍のやつ。三年前に現地のスタジアムで買って、一度も袖を通さずにクローゼットにしまってあったのを、今回のために出した。今回のために、というか、こういう日の […]

    4,644字 / 約8分

  • sudo_maki

    家族 / 現代

    お父さんが死んだ日、私は会社にいた。 母からの電話に出たとき、最初の三秒くらいは何を言われているのかわからなかった。お父さんが、と母が言って、倒れて、と言って、それからもう、と言った。「もう」の先を母は言えなかった。言え […]

    4,034字 / 約7分

  • 関凛子のお断り代行

    友情 / 現代 / 社会人

    四限目の数学は、二次関数の最大値と最小値をやっていた。 黒板の放物線を写しながら、頂点の座標を書き込もうとしたところで手が止まる。来た。頭の奥のほう、後頭部の少し上あたりで、ふだんは弛んでいる糸がすうっと張りつめる感覚。 […]

    6,253字 / 約10分

  • ホールドアップ

    すれ違い / 俳優 / 現代

    ぶつかった拍子に、棚に置いてあった本やら小物やらが落ちた。神経を逆撫でするような破損音はしなかった。それに安堵している自分に、透はまた腹が立つ。 始まりは、いつもと同じだ。透が笑ったのだ。律が怒っているのに、それをなだめ […]

    946字 / 約2分

  • 適正配置

    シリアス / 現代

    異動の辞令が出たのは三月の末だった。 市民協働課から企画政策部の公共施設マネジメント推進室へ。奥寺雅人は辞令の文面を読んだとき、推進室という名前の響きに、すでに走り出している列車に途中から乗せられるような感覚を覚えた。推 […]

    9,840字 / 約16分

  • 読めない話

    日常 / 現代 / 社会人

    金曜の夜だから混んでいた。座敷に通されるまで十分近く待って、ようやく靴を脱いだ。 「とりあえず生みっつ」 そう云って、北村は店員を呼んだ。奥田と寺田はほぼ同時に上着をたたんだ。三人で飲むのは正月ぶりだった。大学の同期で、 […]

    4,491字 / 約7分

  • 湯通し

    すれ違い / 日常 / 現代

    コーヒーメーカーをもらった。 箱に入っていた。リボンはなかったけれど、無地の紙袋にきちんと収まっていて、少なくとも何かのついでではなさそうだった。ありがとう、と言った自分の声に嘘はなかったと思う。目の前で開けたら喜ばなけ […]

    1,328字 / 約2分

  • 等価交換

    ダーク / 現代

    FAVEのポップアップショップは整理券制で、二人の番号が呼ばれたのは十一時半だった。 千明がカフェスペースの席を確保して、飲み物を二つ買っておく。パンダちゃんは物販の列に向かった。今日のパンダちゃんはくすんだピンクのジャ […]

    4,807字 / 約8分

  • 確認事項

    お仕事 / ヒューマンドラマ / 友情 / 現代

    那覇のホテルのロビーは、台風の余波で足止めを食った人間たちの熱気で蒸れていた。 飯田奈歩はフロントカウンターの列に並びながら、スマートフォンで翌日の便の欠航情報を確認していた。朝の便も昼の便も欠航。少なくともあと一泊は必 […]

    4,673字 / 約8分