ラリエット。鎖骨の上で、小さな石が揺れていた。
向かいに座って話しながら、それが気になっていた。話の内容はあまり頭に入らなかった。うなずいて、相槌を打って、笑うべきところで笑って、その合間にちらちらと石を見た。鎖骨の窪みに落ち着いたり、身じろぎのたびに鎖骨の外側まで滑ったり。細い鎖が首筋に沿って光っていた。
石の色を確かめようとしたが、光の当たり方が変わるたびに違う色に見えた。窓際の席だった。午後の光が低く差し込んで、影が伸びていく時間帯だ。何色と言えばいいかわからなかった。どんな石か聞こうとして、やめた。話の流れが変わる気がした。単純に恥ずかしかったのかもしれない。鎖骨を見ていたと知られるのが。どちらが理由でも、言えなかったことに変わりはない。
毛先に残る若竹色に気がついたのはそのあとだ。席を立つとき、ふと目線が動いて、そこにあった。日陰では気づかなかった色で、光の中ではっきり見えた。毛先の数センチだけ、透けるような緑がのこっている。染めかけか、抜けかけか、どちらともつかない色がそこにあった。きれいだと思った。思ったが、聞かなかった。
帰り道、ラリエットの石の色と若竹色を交互に思い出した。どちらも正確には覚えていなかった。
光の加減で変わるものを、記憶だけで再現するのは難しい。でもそこにあったということだけは確かだった。聞けばよかったのかどうか、今もわからない。わからないまま、鎖骨の窪みと毛先の色だけが残っている。