2026.05.14

若竹色のラリエット

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633文字 約1分

ラリエット。鎖骨の上で、小さな石が揺れていた。

向かいに座って話しながら、それが気になっていた。話の内容はあまり頭に入らなかった。うなずいて、相槌を打って、笑うべきところで笑って、その合間にちらちらと石を見た。鎖骨の窪みに落ち着いたり、身じろぎのたびに鎖骨の外側まで滑ったり。細い鎖が首筋に沿って光っていた。

石の色を確かめようとしたが、光の当たり方が変わるたびに違う色に見えた。窓際の席だった。午後の光が低く差し込んで、影が伸びていく時間帯だ。何色と言えばいいかわからなかった。どんな石か聞こうとして、やめた。話の流れが変わる気がした。単純に恥ずかしかったのかもしれない。鎖骨を見ていたと知られるのが。どちらが理由でも、言えなかったことに変わりはない。

毛先に残る若竹色に気がついたのはそのあとだ。席を立つとき、ふと目線が動いて、そこにあった。日陰では気づかなかった色で、光の中ではっきり見えた。毛先の数センチだけ、透けるような緑がのこっている。染めかけか、抜けかけか、どちらともつかない色がそこにあった。きれいだと思った。思ったが、聞かなかった。

帰り道、ラリエットの石の色と若竹色を交互に思い出した。どちらも正確には覚えていなかった。

光の加減で変わるものを、記憶だけで再現するのは難しい。でもそこにあったということだけは確かだった。聞けばよかったのかどうか、今もわからない。わからないまま、鎖骨の窪みと毛先の色だけが残っている。

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