同じだけの感情は返ってこない。それをわかっていて、改めて突きつけた上で、寄り添おうと言っているのだ。
図々しい。
自分でもそう思う。釣り合わないと知っている。一方が重く、一方が軽い。天秤にかけたら一瞬で傾く。そのことに気づいていない方が楽だったが、気づいてしまった。相手の目を見ればわかった。嫌われてはいない。ただ、同じ温度ではないのだ。好意はある。好意はあるけれど、こちらが差し出すものとは重さが違う。気づいた上で言うのだから始末が悪い。言い訳のしようがない。言い訳をしようとも思わない。
人は愚かだ、ある一点においては。
理性が届かない場所がある。どれだけ整理しても、整頓できない引き出しがひとつある。もう、溶かされてしまった。いつ溶けたのか、正確には言えない。笑い方だったのか。不意に見せた横顔だったのか。荷物を持とうとして手が触れたときだったのか。どれかひとつが決定的だったのではなく、全部が少しずつ効いていた。気づいたときにはもうそうなっていた。戻れない場所まで来ていた。気づくのはいつも少し遅い。
なにも感じないままでいることは難しい。何度試みてもできなかった。感じないふりはできた。しばらくはもった。しかしふりはふりだ。やがてほころびる。些細なことで。名前を呼ばれただけで。それで全部だめになる。
離れても苦しいなら、一緒にいても同じかもしれない。苦しさの種類が変わるだけかもしれない。それでも、と思う。それならばせめて、と思う。図々しいとわかった上で言う。ちゃんと言う。返ってこないとわかっている言葉を、それでも声にする。