2026.05.17

いい現場

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7,086文字 約12分


【G】大手検索サイト レビュー| めし処さかもと

★★★★☆ 味は確か。このへんでまともなハンバーグ食べたいならここ一択。店員の女の子が明るくて感じいい。- yamada_t(2023年4月)

★★★★★ ハンバーグ定食が絶品です! お肉の旨みがすごい。若い女性の店員さんが元気で、店の雰囲気も◎ – 食べるの大好き主婦(2023年6月)

★★★☆☆ 味は普通にうまい。店員は若い女の子で、店主のおじさんと二人でまわしてる感じ。おじさん、女の子の前だとやたらニコニコしてた。- tanaka0099(2023年9月)

★★★★★ 冬限定の煮込みハンバーグが絶品。肉の味がとにかく濃い。今まで食べたハンバーグで一番かもしれない。常連になります。- グルメ散歩(2024年1月)

★★★★☆ 友人に勧められて。確かにハンバーグはおいしい。店員さんが若くてかわいかった。店主のおじさんも愛想よし。- みぃぽん(2024年5月)

★★★★★ ここのハンバーグほんとおいしい。お肉の仕入れにこだわってるらしくて、味が全然違う。看板メニューだけある。- りょうたろ(2024年8月)

【S】スポットワーク 口コミ|めし処さかもと

★★★★★ きなこ(20代女性)2023年3月
店長さんやさしい! まかないもおいしかったです♪ また入りたい!

★★★★★ rina_23(10代女性)2023年4月
初スポットワークで緊張してたけど丁寧に教えてもらえました。まかない付きなのうれしい。

★★★★☆ タケ(20代男性)2023年4月
時給いいし駅近だし、条件だけで応募した。口コミ女の子ばっかで正直ビビったけど、店長は普通にいい人。男にも丁寧。まかないもうまかった。

★★★☆☆ おっとっと(30代男性)2023年5月
時給につられて応募。可もなく不可もなく。まかないは出たけど冷めたカレーだった。

★★★★★ ゆーみん♡(20代女性)2023年5月
2回目です! 店長が名前覚えてくれてた。まかないのハンバーグが絶品。友達にもすすめた。

★★★★★ タケ(20代男性)2023年5月
3回目。すっかり顔馴染み。今日のまかないはレバニラ定食。「スタミナつけろよ」って。体育会の先輩みたいなノリで居心地いい。

★★★★★ mii(10代女性)2023年7月
店長やさしかった~ まかないおいしい! また行く!

★★★★★ タケ(20代男性)2023年7月
もう何回目かわかんない。まかないが毎回ちゃんとしてて、メニュー被りがない。鶏レバーのコンフィとほうれん草のソテー。「おまえは体でかいから栄養いるだろ」って。面倒見いい店長。

★★★★★ SAYA(20代女性)2023年8月
雰囲気いいお店! 店長のハンバーグおいしすぎます。お気に入り登録しました!

★★★★★ タケ(20代男性)2023年9月
ここのまかない食べ始めてから体の調子がいい。鉄分多めのメニューが多いからかも。「最近いい顔色してんな」って言われた。地味にうれしい。

★★★★★ あーちゃん(20代女性)2023年10月
はじめてでしたが楽しかったです! まかないのハンバーグがおいしくて感動しました。

★★★★★ タケ(20代男性)2023年10月
半年通った。店長が「今年の冬はおまえに手伝ってもらいたい」って。まかないは最近さらにすごくて、今日はラムのローストだった。いい現場見つけたわ。

★★★★★ mii(10代女性)2023年12月
久しぶりに入りました! 相変わらずやさしい店長。冬メニューおいしかった♪

★★★★★ ゆーみん♡(20代女性)2024年2月
ひさびさのさかもと! 冬の煮込みハンバーグが最高でした。また来ます!

口コミを何周もスクロールして、俺はだいたいの構図を理解した。

女の子の評価がやたら高い。★5が並んでて、「やさしい」「まかないおいしい」「また行きたい」。男の口コミはほぼない。三十代のやつが一件、★3で「冷めたカレーだった」。露骨すぎてちょっと笑った。女の子にはハンバーグ、男には冷めたカレー。

ただ、時給は本当によかった。この辺の飲食にしては二百円くらい高い。

で、タケっていう男が何回も入ってた。★4から始まって、回を追うごとにまかないの内容を報告するみたいなノリになっている。レバニラ、鶏レバー、ラム。タッパーで持ち帰りまでもらっていたらしい。最後の投稿が去年の十月で、「冬は手伝ってもらいたい」と言われている。その後の口コミはない。冬はちゃんと手伝ったのかもしれないし、飽きてやめたのかもしれない。

四月の頭に応募した。女の子ばっかり受かってるなら弾かれるだろうし、それならそれでいい。暇な土曜で、どうせほかに予定もなかった。

めし処さかもと。

駅から五分くらいの路地裏にある、八席のカウンター店。看板は色あせてて、外から見たら完全に昭和の定食屋。

店長の坂本さんは五十過ぎくらいで、四角い体つきに丸い顔がのっかっている。腕が太い。元は精肉店で修業してたらしく、肉の仕入れから仕込みまで全部ひとりでやっている。奥に業務用の冷凍庫があって、ウォークインの、人が何人も入れるやつ。この規模の店にしてはでかいなと思ったけど、「肉は鮮度が命だからな」と言われた。

初日のまかないは看板メニューのハンバーグ定食だった。分厚くて、肉汁の圧がすごくて、付け合わせのポテサラまで手作り。冷めたカレーじゃなかった。

「うまいっすね」と言ったら、坂本さんは少しだけ目を細めて、「いっぱい食え」と言った。

二回目。

「よう、来てくれたか」と坂本さんが笑った。

この日のまかないは豚しょうが焼きで、キャベツの千切りが山みたいに盛ってあった。ビタミンCは鉄の吸収を助けるんだぞ、と言われたが、それが何の話かはよくわからなかった。

帰り際に「来週の土曜も入れるか」と聞かれた。意外だった。口コミの印象だと、この店は若い女の子を優先的に入れているように見えたからだ。そのことをぼかして聞いてみたら、坂本さんは苦笑した。

「あー、あれな。うちのまかない食ってると肌がきれいになるとかで、女の子の間で変に広まっちまったんだよ。ありがたいんだけど、おっさんと若い女の子で二人きりってのは問題だろ? だから女の子のときは二人呼ばなきゃなんねえ。人件費倍だよ」

それで、と坂本さんは言った。

「男が来てくれると助かるんだ。二人きりでも気を遣わなくていいし、一人分で済む」

なんだ、おっさんが意図的に選んでたわけじゃないのか。穿った目で見てて悪かったな、と思った。

五月の終わり。

大学の中間レポートが三つ重なった週があって、三日くらいまともに寝てなかった。そのまま土曜のシフトに入った。

カウンターの準備をしていたら、坂本さんがじっとこっちを見ていた。

「顔色悪いな。ちゃんと食ってんのか」
「いや、最近レポートやばくて、カップ麺とかコンビニばっかで」

坂本さんは黙ってうなずいた。その日のまかないは、営業が始まる前に出てきた。いつもは閉店後なのに。豚レバーの竜田揚げと、ほうれん草の胡麻和え。赤身の多い牛肉の煮込み。味噌汁にはしじみが入っていた。

「まず食え。話はそのあとだ」

全部食べたら本当に視界がはっきりした。坂本さんは「ちゃんと食わねえと血が薄くなる」と言って、閉店後にタッパーを二つ渡してきた。白いプラスチックの、業務用っぽいやつ。中身は牛すじの煮込みと、切り干し大根の煮物。

「明日と明後日の昼に食え。レンジで温めるだけでいいから」

断る理由がなかった。実際、翌日のレポート作業中に食べた牛すじは、コンビニ弁当とは比較にならなかった。

翌週もタッパーが出てきた。その翌週も。坂本さんは俺の食事事情を把握しはじめていて、「昨日なに食った」と聞くようになった。コンビニの名前を出すと露骨に顔をしかめる。

「週一でいいからうちで食え、じゃ足りねえな。持っていけ。残りもんだから気にすんな」

残りものと言うわりに、タッパーの中身は毎回きちんと計算されているように見えた。肉、葉物、根菜。彩りまで整っている。ただ、それはプロの矜持みたいなものだろうと思った。

六月。

週一で通うのが完全に定着した。タッパーは毎回三つになっていた。

坂本さんのまかないには法則があった。必ず肉が入っている。鶏レバー、砂肝のコンフィ、ラム。付け合わせはほうれん草や小松菜が多い。たまに赤身の刺身が出る。持ち帰り分にも同じ傾向があって、冷蔵庫を開けると坂本さんの作ったものが二段くらい占めている状態が普通になっていた。

「若いうちに食っとけよ。体は食ったもんでできてんだから」

三回聞いた。坂本さんの口癖だった。

女の子は基本的にランチ帯のシフトで、ピークが過ぎると帰る。俺は閉店作業まで残るから、まかないは営業が終わってからの二人きりの時間に出てくる。女の子たちが俺のまかないを見ることはない。

たまにシフトが被る日があった。そういう日は女の子にも、ちゃんとしたまかないが出ていた。コラーゲンたっぷりの鶏手羽の煮込みとか、アボカドとサーモンのサラダとか。「肌にいいやつだぞ」と坂本さんが言うと、女の子は嬉しそうに写真を撮っていた。口コミで「まかないで肌がきれいになる」と広まった理由がわかった。

俺に出てくるのは、同じ日でも方向性が違った。レバー、赤身、ほうれん草。「おまえは鉄だ」と坂本さんは言った。男と女で必要な栄養が違うんだよ、と。それはたぶん正しいんだろうと思った。

七月。

梅雨明けの土曜、閉店後に汗だくで片付けをしていたら、坂本さんが冷えた甘酒を出してきた。

「夏場は脱水に気をつけろ。せっかくいい血を作ってんだから」

いい血を作ってる、という表現はよくわからなかったけど、甘酒はうまかった。米麹の、どろっとしたやつ。飲む点滴っていうんだろ、と坂本さんは言った。

この日のまかないは、にんにくの効いた牛ハラミのステーキだった。

「夏バテすんなよ。秋までにしっかり食い込んどけ」

帰りのタッパーは四つになっていた。牛しぐれ煮、レバーのしょうが煮、ほうれん草のおひたし、鶏むね肉のマリネ。全部、常温でも傷みにくい作り方になっていた。

「夏場は足が早いから、二日以内に食え。順番は――まず赤いのからだ」

赤いの、つまりレバーと牛肉。鉄分を先に入れろという意味だと思った。坂本さんは俺の一週間の食事を、タッパーの中身で設計しているようだった。

八月。

大学の夏休みに入って、地元に帰ったり旅行に行ったりして、二週続けてシフトを休んだ。坂本さんには事前に伝えてあったけど、「二週間か」と短く言っただけだった。

戻ってきた土曜、坂本さんが開口一番に言った。

「ツヤが落ちてる」

一キロも変わってないと思うんですけど、と返したら、坂本さんは首を振った。

「体重じゃねえ。肌だよ。なに食ってた」 「旅行だったんで、外食とか適当に」 「だろうな」

その日のまかないは三品あった。馬刺し、牛タンの塩焼き、モロヘイヤのおひたし。坂本さんは俺が食べるのを見ながら、「二週間で帳消しだ」と言った。

帰りのタッパーは五つに増えていた。

「しばらくは毎日食え。今回みたいに途切れると振り出しに戻る」

振り出し、という言い方が気になった。なにかのプロジェクトみたいだと思った。でも、それはたぶん俺の健康管理のことで、坂本さんなりの責任感なんだろう。

それから毎回、シフトの始めに顔色を見るようになった。俺が「今日は元気です」と言うと、「うん、戻ってきたな」と返す。表情を確認しているというよりは、なにか別のもの――肌の色とか、血色とか、そういうものを計っているような目だった。

九月。

このあたりから、坂本さんの距離が近くなった。

片付けをしていると後ろから肩を揉んできた。「凝ってんな。力仕事のあとはほぐしとかねえと」。大きな手のひらで、肩から背中にかけてをぐっと押される。何の気なしに、という感じだった。

すれ違うときに背中をばんと叩く。厨房で並んで作業しているとき、ふいに二の腕を掴む。「お、ちょっとしっかりしてきたな」。

友達の父親にもこういうタイプがいた。言葉より手が出る。悪気のないスキンシップ。

閉店後、翌日の仕込みを手伝っていたとき、坂本さんが塊肉を捌きながら「牡と牝で肉の味、全然違うの知ってるか」 言った。

「え、そうなんすか」
「牡の方が味が濃い。肉の旨味が強いんだよ。牝は脂に甘みが出るけど、赤身の力は牡にかなわねえ。特に若い牡だな。若いうちが一番いい」

坂本さんは肉の断面をじっと見てから、「うちのハンバーグが美味い理由のひとつだ」と言った。

坂本さんがまかないを出しながら言った。

「秋はいちばん大事な時期だからな。しっかり食え」

なにが大事なのかは聞かなかった。

十月。

大学の後期が始まって、課題に追われる日が増えた。疲れた顔でシフトに入ると、坂本さんはまず鉄分の多いものを出すようになった。やりかたが前よりも手早くなっていて、俺の顔を見た瞬間に「今日はレバーだな」と判断しているみたいだった。

タッパーの中身も課題の忙しさに連動していた。「今週はきついんだろ」と言われた週は、温めるだけで食べられる煮込みや、そのまま食べられるローストビーフが入っている。俺の生活リズムを坂本さんが把握していることに、もう違和感はなかった。

鹿肉のロースト。赤身の馬刺し。牛すじとほうれん草の煮物。鉄分とたんぱく質の多い献立が続いているのは、さすがに気づいていた。

「坂本さん、栄養士の資格とか持ってます?」 「持ってねえよ。肉屋やってりゃ自然に覚える」

月の終わりに、坂本さんの指が俺の脇腹をつまんだ。

「いい感じだな。このへんの乗りが違う」

乗り、というのは脂肪のことだろうか。俺が「太りました?」と聞いたら、「いや、いい体になってきてるよ」と笑って、それきり別の作業に戻った。

十一月。

閉店後、坂本さんが厨房の奥から体重計を引っ張り出してきた。業務用の、台の広いやつ。

「何キロだ? 乗ってみ」

その前に筋トレの話をしていた。食費が浮いた分で最近ジムに通い始めたと言ったら、坂本さんが妙に乗り気になって、メニューの組み方とか食事のタイミングとかを聞いてきた。その流れだった。

七十四キロ。四月に来たときは七十一だったから、半年で三キロ増えていた。

坂本さんはうなずいた。それから俺の腕を持ち上げて裏側を見て、ふくらはぎを軽く叩いて、「ここの肉付きがいい」と言った。

「冬に向けて仕上がってきたな」

坂本さんはそう言って、満足そうだった。

この日のまかないは特別だった。分厚いサーロインの炭火焼き。中はきれいなロゼ色で、見た目からしてスポットワークのバイトに出す量じゃない。

「おまえには世話になってるからな」 「こんないいの食べていいんすか」 「いいんだよ。おまえには食わせたいんだ」

食わせたいんだ、という言い方がすこし引っかかったけど、肉を切り分けてくれる手つきがあんまりにも丁寧で、素直においしかった。

帰りにタッパーは出なかった。そのかわり、坂本さんが言った。

「来週までは、あんまり食うなよ。胃を休めとけ」

意味はよくわからなかったけど、言われた通りにしようと思った。

十一月の終わり。

よく晴れた土曜の営業が終わって、坂本さんが「来週さ」と言った。

「来週の土曜、ちょっと仕込み手伝ってほしいんだよ。営業前に来れるか。冷凍庫の整理、ひとりだときついんだ。冬の仕込みはやること多くてな」

二つ返事でオーケーした。半年以上通って、もうこの店の勝手はだいたいわかっている。坂本さんがひとりで朝の仕込みをやってるのも知ってる。大変だろうなとは前から思っていた。

帰りの電車で、アプリを開いて口コミを書いた。

【S】スポットワーク 口コミ|めし処さかもと

★★★★★ ユウ(20代男性)2024年11月

半年以上通ってます。まかないが毎回すごくて、メニューが被ったことがない。持ち帰りまでもらえるので食費がかなり助かってる。店長は気さくで面倒見がよくて、体づくりの相談にものってくれる。ここ来てから体の調子もいいし、体重も増えた。来週は営業前の仕込みから手伝うことになりました。いい現場です。

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