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現代
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残高
AI / ダーク / ディストピア / 現代
百十二円だった。 柘植拓真がその差額に気づいたのは、月末の家計簿アプリを開いたときだった。二十七日の夕方、タクシー配車アプリで自宅から駅前のクリニックまで乗った。降りるとき、画面には千四百八十円と表示されていた。翌日届い […]
3,860字 / 約6分
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寒梅温冷
ヒューマンドラマ / 演劇 / 現代
四ステージ目。客席の後ろのほうに座っている。満席ではないので、私はここにいる。まあ、賑やかしだ。制作補佐の仕事はほとんどが開演前に終わっていて、受付で当日券を捌いて、お客さんを案内して、客席が落ち着いたら空いている席に座 […]
3,293字 / 約5分
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ハッピーポンコツ睦言
お仕事 / 日常 / 現代 / 社会人
紙 怪我 頭 金 息災 紙 「痛ッ」 封筒の角で人差し指を切った。血が出ている。浅いけど、しみる。冬場は乾燥してっからな、こういうのがいちいち深く入る。ティッシュ巻いとけば止まるだろ、と思って巻いた。巻き方が雑で、ティッ […]
3,308字 / 約6分
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頭のなか読むの禁止
お仕事 / シリアス / 現代 / 超能力
語彙 手順 線 倫理 語彙 「あれ取って」 戸塚がソファから手を伸ばしている。指の先には何もない。テーブルの上にはマグカップとリモコンとペンと文庫本がある。 あれ、では通じない。通じないはずなのに、わたしにはわかってしま […]
3,268字 / 約5分
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白い布
お仕事 / 友情 / 現代
居酒屋のテーブルの下に、黒いトランクケースがある。剛の足がときどきその角に当たって、中の金属が微かに鳴る。朝と同じ重さだった。 「で、どうだったの」 ビールで唇を湿らせながら健太が訊いた。向かいの裕也はお通しのポテトサラ […]
2,751字 / 約5分
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なんか
シリアス / すれ違い / ダーク / 現代
奈津が足の小指をテーブルの脚にぶつけたとき、相馬は台所で麦茶をグラスに注いでいた。短い悲鳴のあと、うずくまる背中に「大丈夫?」と声をかけると、奈津は目に薄く涙を浮かべたまま笑って「大丈夫」と言った。 そのときの大丈夫は、 […]
3,807字 / 約6分
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盲点についての覚書
お仕事 / 現代
川瀬が「盲点」と言ったのは木曜日の昼で、それを聞いた栗田が眉をひそめたのも木曜日の昼だった。 「それ、差別用語に入ってるの知ってます?」 栗田は二十六歳で、川瀬より四つ若い。言い方に棘はなかった。ただ事実を述べるような、 […]
2,318字 / 約4分
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複雑なひとの話
お仕事 / すれ違い / 現代 / 社会人
「佐山さんって、複雑な人だよね。」 僕がそう言ったとき、後輩の丸山が怪訝な顔をした。 「……悪口ですか?」 「は? なんで。」 「いや、複雑って。」 「褒めてるんだけど。」 丸山はペットボトルのお茶を一口飲んで、それ以上 […]
2,353字 / 約4分
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ものさし
お仕事 / すれ違い / 現代 / 社会人
お弁当の蓋を開けながら、典子は向かいに座った女性をなんとなく眺めていた。 総務から異動してきた水野さん。来てまだ三週間ほどで、昼休みに誰と食べるか定まっていないのか、今日も給湯室の隅のテーブルにひとりで座っている。典子は […]
2,192字 / 約4分
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赤が減る
AI / お仕事 / ヒューマンドラマ / 現代
宮本隆一は、赤ペンの男だった。 出版翻訳の編集部に三十年。彼の机を通過した原稿は、例外なく朱に染まって返ってきた。一ページに何も書かれていない、ということがない。翻訳者たちは彼のフロアを「処刑場」と呼んだ。本人の耳にも届 […]
2,211字 / 約4分
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一般人
すれ違い / 日常 / 現代 / 社会人
結婚しよう、と彼が言った。 居酒屋だった。金曜の、騒がしいほうの時間帯で、隣のテーブルでは大学生くらいの男の子たちがビールタワーを囲んでいた。彼の声はその喧噪にまぎれて半分くらい聞こえなかったけれど、口の動きと、それから […]
1,973字 / 約3分
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検視
お仕事 / シリアス / ダーク / 現代
先生の手は、正確だった。 メスの角度も、開いた後の縫合も、すべてに理由がある。もう何も感じない体に同じ手間をかけるのは無駄ではないかと、一度だけ訊いたことがある。この人にはまだ名前がある。手を止めないまま先生はそう云った […]
1,873字 / 約3分